PR
映画の広場 トップへ

SF・ファンタジー / アニメーション・ 考察

アリエッティはなぜ今も配信されない?主題歌誕生秘話と監督抜擢の舞台裏

neko 2026.07.28

公開年 2010年
監督 米林宏昌
出演者 志田未来、神木隆之介、大竹しのぶ、竹下景子、藤原竜也、三浦友和、樹木希林

あらすじ

古い屋敷の床下でひっそり暮らす小人の少女アリエッティ。病気療養のため屋敷にやってきた少年・翔に姿を見られてしまったことから、二人の間に不思議な交流が生まれていく物語。

▼続きを読む(ネタバレあり)

アリエッティとの交流を通じて生きる意志を得た翔だったが、家政婦ハルによる捕獲騒動をきっかけにアリエッティ一家は屋敷を離れることに。最後に洗濯バサミと角砂糖を贈り合い、二人は静かに別れを迎える。

3.5 / 5.0

ふと思い出したときに観たくなる1本。綺麗な家具にも惹かれちゃいますね。

①主題歌「アリエッティの歌」は、1通のファンレターから生まれた?

『借りぐらしのアリエッティ』を彩る主題歌「Arrietty’s Song」を歌うのは、フランス・ブルターニュ出身のハープ奏者、セシル・コルベル。実は彼女がジブリ作品と関わることになったきっかけは、公式なオファーではなく、彼女自身がプロデューサーの鈴木敏夫氏へ送った1枚のCDと手紙だったと伝えられています。

もともとジブリ作品のファンで、特に「火垂るの墓」に強く心を動かされたというコルベル。感謝の気持ちを込めて自身のアルバムを送ったところ、それが鈴木氏の目に留まり、まさかの主題歌抜擢へとつながったのだそうです。ケルトの民族楽器であるハープの音色と、フレンチポップ寄りの歌声が組み合わさった独特のサウンドは、この“逆輸入”のようなきっかけがなければ生まれなかったのかもしれません。

ジブリ作品の主題歌というと、日本人アーティストが起用されるイメージを持つ方も多いかもしれませんが、今回のような「ファンからの手紙がきっかけで実現した起用」は、ジブリの作品づくりの懐の深さを象徴するエピソードのひとつと言えそうです。

②なぜ『アリエッティ』は今も配信サブスクで観られないのか?

「借りぐらしのアリエッティを配信で観たい」と検索してこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。2026年現在も、Amazonプライム・ビデオやNetflix、Hulu、U-NEXTといった日本国内の主要な動画配信サービスでは配信されていない状況が続いています。視聴する手段としては、DVD宅配レンタルのTSUTAYA DISCASを利用する、もしくは海外版のNetflixで視聴する(VPN経由)という方法が主に紹介されています。

これはアリエッティに限った話ではなく、スタジオジブリ作品全般が日本国内の定額制サブスクでほとんど配信されてこなかったことに起因すると考えられます。海外版Netflixでは視聴できるという状況は、権利関係や配信戦略が国によって異なることをうかがわせます。

今はスマホひとつであらゆる映画がすぐ観られる時代だからこそ、逆に「配信では観られない」という制約が、金曜ロードSHOW!などの地上波放送を“特別な機会”として際立たせている面もあるのかもしれません。これは当時というより、配信が当たり前になった今だからこそ生まれた、ある種の“希少価値”のような見え方とも言えそうです。

③絵コンテを描いたことのないアニメーターが、なぜ長編の監督に抜擢されたのか?

『借りぐらしのアリエッティ』は、それまでアニメーターとして活躍していた米林宏昌さんの初監督作品です。当時36歳、ジブリの長編アニメ映画としては歴代最年少での監督起用でした。本人の証言によれば、ある日鈴木敏夫プロデューサーに呼び出され、星野社長や宮崎駿監督らが並ぶ場で「監督をやらないか」と告げられたそうですが、演出経験はおろか絵コンテすら描いたことがなく、最初は戸惑いを隠せなかったと言われています。

宮崎駿監督は、原作である「床下の小人たち」を読むよう米林さんに促したとされ、「主義や主張は原作にあるから大丈夫だ」という趣旨の言葉をかけたと伝えられています。もともと『崖の上のポニョ』で波の上を走るポニョの原画を任されるなど、動きの表現に定評があったアニメーターが、企画・脚本を宮崎監督、脚本のまとめを丹羽圭子さんが担う体制のもとで初めて演出という仕事に挑んだ形です。

経験の有無よりも人物そのものを信じて託す、というこの抜擢の経緯は、今の感覚で見ると「実績・経験重視」の起用とは対照的にも映ります。結果として米林監督はこの後『思い出のマーニー』でも長編を任されることになり、このアリエッティが一つの転機だったことがうかがえます。